キャッスルマン病, TAFRO,その類縁疾患調査研究班

研究内容

1.「病態生理と鑑別診断(CD、TAFRO、IgG-4、POEMSについて)」

[目的]CD、TAFRO、IgG-4、POEMSの病理像と臨床所見の確認と、境界例として報告されている症例についての情報を収集し、これらの関連と鑑別診断を明らかにする。

[方法]症例報告において、鑑別診断に苦慮したという症例を収集し、その病理所見や臨床像について情報を集め、疾患概念や診断上の問題点を明らかにする。

[結果および考察]
TAFRO症候群がCDの特殊な病型なのか、異なる疾患なのかが、もっとも大きな問題である。
今日TAFRO症候群とされる発端の報告の3症例の特徴は以下のとおりである。共通点として,発熱,全身浮腫と胸腹水,肝脾腫,リンパ節腫脹,高度の血小板減少,骨髄巨核球増加と軽度の骨髄線維症が認められる。いずれも非特異的な所見で既知の単一疾患に該当せず,確定診断にいたっていない。これらはリンパ節腫脹,肝脾腫とも軽度でリンパ増殖性疾患としての特徴に乏しく,骨髄生検,肝生検(症例1,2),摘出脾(症例2),リンパ節生検(症例3)ともにリンパ腫細胞の増殖や血球貪食性組織球の増加は認めなかった(高井ほか;臨床血液51:320∼325,2010)。 

この最初の報告では、組織診断が試みられているが、病的と思われるリンパ節を生検できたのは1例のみで、他の例ではリンパ節腫大は軽度で生検できるような大きさではなかったという点に注意すべきである。これまでのTAFROの研究は、本報告の症例3のように組織所見がCDに類似していたという点に着目し、CDと診断されている症例についてリンパ節の所見から再検討されているのがほとんどである。病的と認識できないほどのリンパ節腫大しかないTAFRO症例と、CDと同じような組織所見を示すTAFRO症例が同一疾患のスペクトラムに含まれるのかについては、検討がなされていない。

TAFROの診断基準は、おもに臨床的所見から診断することを目的として作られており、これを用いて診断する場合は、CDを含めて典型例では鑑別に困ることはあまりない。症例報告において非典型例、境界例と思われる例を収集すると、「POEMS症候群との鑑別に苦慮したTAFRO症候群の一例」「HIV/HHV8陰性でPOEMS症候群を伴う多中心性キャッスルマン病に対するbortezomibとdexamethasone併用療法による治療の奏効」の報告が注目された。また典型的なCDを認識するうえで、病理学的にIgG4関連疾患の病理とCDとの鑑別の確認も重要と思われた。以上の報告などに対する検討を通じて、診断上の問題点を明らかにしたい。

[結論]リンパ節病変を伴わないTAFRO症候群に位置づけの検討、病態が非典型的で鑑別診断が困難である症例・病態が重複する症例の検討による診断法の確立が、解決すべき課題である。

2.「診断基準、重症度分類、診療ガイドラインの改訂と治療アルゴリズムの策定」

キャッスルマン病

当研究班の前身である「キャッスルマン病の疫学診療実態調査と患者団体支援体制の構築に関する調査研究班」では、診断基準案と重症度分類案を含めたキャッスルマン病診療の参照ガイドを作成し、和文(臨床血液 58: 97-107, 2017)および英文(Fujimoto S, et al. Tentative diagnostic criteria and disease severity classification for Castleman disease: A report of the research group on Castleman disease in Japan. Mod Rheumatol 28: 161-167, 2018.)で公表した。
新研究班では現在、できる限り公益財団法人日本医療機能評価機構が推進するMINDSに準拠した形での、エビデンスに基づくキャッスルマン病診療のガイドライン策定に向けて準備中である。この中では特に、わが国におけるキャッスルマン病の大多数を占め、厚生労働省の指定難病となった特発性多中心性キャッスルマン病の治療アルゴリズムの策定に重点を置く予定である。

TAFRO症候群

TAFRO症候群とは?
2010年に高井らが提唱した新しい疾患概念で、thrombocytopenia;血小板減少, anasarca;全身浮腫・胸腹水, fever;発熱, reticulin fibrosis;骨髄のレチクリン線維症と巨核球の増勢, organomegaly;肝脾腫やリンパ節腫大などの臓器腫大、から成る造語である。TAFRO症候群症例のリンパ節組織像は混合型Castleman病類似の所見を呈する事から、多中心性Castleman病の関連疾患・亜型とする研究者もいる(図1)。

しかし、臨床的にTAFRO症候群は、典型的な多中心性Castleman病とは異なる点が多い。例えば、多中心性Castleman病の多くは比較的慢性の経過であるが、TAFRO症候群は急性に発症し進行もかなり急速である。多中心性Castleman病では高ガンマグロブリン血症を認め、血小板数が増加し、大きなリンパ節腫大を認める事が多いが、TAFRO症候群では、ガンマグロブリン値(IgG, IgA, IgMなど)は正常からむしろ減少し、血小板は減少し、リンパ節は小さく、胸腹水や浮腫が顕著で、腎障害や肝障害も伴う。治療は大量ステロイド、cyclosporin, tocilizumab, rituximabなどが行われ、早期の重症期を乗り越え寛解・治癒する症例も増えているものの、治療抵抗性の経過をとる症例も存在する(図2)。


図1


図2

3.「疫学実態調査とレジストリーの構築運用」

キャッスルマン病の疫学診療実態調査に関する研究

概要

キャッスルマン病は、慢性的にリンパ節が腫大する疾患である。未だに病因や病態が不明で、膠原病や癌などにも属さず疾患概念すら確立されていない希少性難病であり、認知度は低く専門医はほとんどいない。2005年にIL-6レセプター阻害薬(トシリズマブ)の有効性が示されたが、高額でさらに生涯に亘り頻回に静注を余儀なくされるため、日常生活に支障が生じ経済的にも大きな負担となっている。本疾患は体系的・疫学的な研究が行なわれておらず、実態が把握されておらず、診断のためのリンパ節の生検を施行する医師も限られている。病理所見以外特異所見が現在のところ見出されていないため、診断上特異所見や検査所見を発見することが重要な課題である。このため疫学調査が必須となる。これらの課題を解決するために本調査を計画した。

目的

患者診療と治療の実態を把握し、疾患の分類・診断の確立、有効な治療法の普及および治療指針の確立を目指すとともにキャッスルマン病の診療ガイドラインの作成を目的とする。

背景

キャッスルマン病は1956年B.キャッスルマンが提唱した疾患である。その後、リンパ節の病理所見により形質細胞型とヒアリン血管型に大別されている。後者は臨床像良性で放置も可能であるが、前者は症状と検査所見が多彩であり多くの例で治療介入が必要であるが、疾患概念も確立されていない。形質細胞型は、さらにHHV-8ウイルスが陽性の疾患群と陰性群とに分けられる。HHV-8陰性群は原因が不明で病態も十分には解析されておらず、idiopathic multicentric-Castleman病(iMCD)と称され、我が国の患者の多くがiMCDである。iMCDは悪性腫瘍や膠原病でもなく、慢性にリンパ節が腫大し炎症が持続する疾患である。2005年にトシリズマブの有効性が示されたが、それでもコントロールが不良で、間質性肺炎、アミロイドーシス、高度な貧血合併等により死に至りうる重症化を認める。

患者は常に倦怠状態が続き適切な治療も受けられない場合は、次第に悪液質状態となって合併症や易感染が起こり、常に不安を抱きながら不穏な生涯を送っている。本疾患を認知し診断し得る医師は極めて少数であり、また疫学調査も組織的に行われず、我が国の患者数は今のところ1500名前後と言われているが、実態は全く不明である。この原因の1つとしてリンパ節の特異的病理像がたった1つの診断根拠で、血清学的特異マーカーもなく他の検査法でも診断がつかないことが挙げられる。研究責任者の吉崎らにより、暫定診断基準や疾患活動性指標などが策定されたが、この検証も必要である。以上のように本疾患は発病の機構が不明の希少疾患であり、診断基準並びに治療方法が確立の途上であり、長期療法を必要とする難病である。さらに、医師の認知度が低く診断に難渋するとともに、患者の生活を脅かす疾患であるため、第一に患者団体との協力により包括的な疫学調査を必要とする。また、医師患者への啓蒙活動が必要である。以上、キャッスルマン病は専門医並びに研究者も少なく認知度も低い、まさに「おきざりにされた希少慢性難病」である。本研究は患者診療と治療の実態を把握し、疾患の分類・診断の確立、有効な治療法の普及および治療指針の確立を目指すとともにキャッスルマン病の診療ガイドラインの作成を目的とするものである。

4.「中央病理診断」

キャッスルマン病、TAFRO症候群およびその類縁疾患に対する病理中央診断と診断精度向上、病態解明を目的とした病理学的研究

[目的]
①キャッスルマン病、TAFRO症候群およびその類縁疾患は、その病理組織像の類似性、希少性のため、専門外の病理医には診断が困難であることが多い。各疾患の患者が適切な診断と治療を受けることができるように、これらの疾患を専門とする病理医のボードによる中央病理診断を行う。
②また、これらの希少疾患に対し、診断的意義のある組織学的因子の解明、疾患の病理発生、病態解明を目的として、集積された病理検体の残余を用いて病理学的検索を行う。

[方法]
①中央病理診断
診療拠点病院の担当医が、患者の臨床情報と病理標本を病理診断センターに送付し、データベースに登録する(図参照)。病理標本には診断に必要な追加染色が施され、バーチャルスライドに画像を取り込む。病理委員はオンラインでバーチャルスライドの病理画像を閲覧し、討議を行い、最終病理診断を行う。病理診断は診断センターから診療拠点病院の担当医に報告され、紹介元にフィードバックされる。
病理所見もデータベースに蓄積し、臨床情報とともに、臨床病理学的検討に供される。
②診断の残余検体を用いた病理学的検索
残余未染色標本に対し、免疫染色、in situ hybridization等の病理学的検索を行う。対象となる物質は、本疾患群の診断的価値が高いと推測される表面マーカー、血管内皮マーカー、ウイルス関連分子、あるいは病態解明につながると推測されるサイトカイン関連分子等である。

[期待される結果]
①中央病理診断
専門化された病理ボードによる中央診断を行うことにより、精度の高い病理診断を行うことができる。結果として、患者に適切な治療が供与される。また、希少疾患を多数集積することにより、診断困難であったこれらの疾患群に対する新しい診断的価値のある臨床病理学的因子の解明が期待される。
②診断の残余検体を用いた病理学的検索
臨床情報とひも付けられた症例の各種マーカー、分子の発現情報を得ることにより、新しい診断的価値のある組織学的因子、治療反応性の指標の解明が期待される。また、疾患の病理発生、病態についても情報が得られる可能性がある。

5.「病院ネットワークの構築」

目的:キャッスルマン病は希少疾患であるため、キャッスルマン病に対して適切な診療を行う医療機関は限られている。そのため本邦のキャッスルマン病の患者がどの地域に居住していても安心して最適な医療が受けられるよう、キャッスルマン病の診療体制を構築する。

計画:全国を8地域 (北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州)に分け、各地域にキャッスルマン病診療の中心的役割を担う医療機関を、地域中核病院として選定する(下図参照)。また各地域で地域中核病院と連携を取りながら診療を行う地域連携施設を、日本血液学会の血液疾患症例登録データなどを参考にして選出し、その役割を吉崎班から依頼する。吉崎班、地域中核病院、地域連携施設が連携を取ることにより全国8地域における診療体制を整える。

成果:全国から、北海道大学 (血液内科)、東北大学 (血液・免疫科)、慶應義塾大学 (血液内科)、都立駒込病院 (膠原病科)、東京慈恵会医科大学 (腫瘍・血液内科)、金沢医科大学 (血液・リウマチ膠原病科)、名古屋第一赤十字病院 (血液内科)、京都大学 (血液・腫瘍内科)、大阪大学 (血液・腫瘍内科)、高松赤十字病院 (血液内科)、岡山大学 (血液・腫瘍内科)、長崎大学 (第一内科)の12施設(図1)に地域中核病院を依頼した。地域中核病院は、1) 吉崎班で実施する臨床研究を共同で行う、2) 地域連携施設と連携しキャッスルマン病医療の均てん化を推進する、3) 各地域でキャッスルマン病診療の指導をする、4) セカンドオピニオンを受け入れるなどを行う。次に地域連携施設の候補として、236施設を選出した。これらの施設にアンケートを行い、114施設が地域連携施設の役割を引き受けると回答した。さらに具体的な担当医の選出などを依頼したところ、65施設 (北海道 6施設、東北 3施設、関東 19施設、中部 12施設、近畿 13施設、中国 3施設、四国 3施設、九州 6施設)から担当医の紹介があった。よって現時点での地域中核病院は12施設、地域連携施設は65施設となる。

今までの成果として、1) 地域連携施設を65の施設に依頼した、2) 吉崎班、地域中核病院、地域連携施設が連絡を取り合うメーリングリストを作成し、UMIN (大学病院医療情報ネットワーク)に登録した、3) 地域中核病院、地域連携施設に対して、吉崎班で作成した「キャッスルマン病診療の参照ガイド」を配布し、キャッスルマン病診療の質の向上に努めたなどが挙げられる。また地域中核病院と地域連携施設は全国各地域をある程度カバーしており、キャッスルマン病の診療体制は整いつつある。

今後の予定:今後は、メーリングリストを活用して、キャッスルマン病に関する情報の提供、吉崎班会議の案内、班会議の議事録の配布などを行い、キャッスルマン病に関する最新の情報を提供していく。また患者側からの診療に関する相談に備え、地域中核病院と地域連携施設が連絡を取り合い、患者がどの地域に居住していても最適な医療が受けられるよう、キャッスルマン病の診療連携体制を構築していく。現在の課題として、1) 地域中核病院の横の繋がりが十分ではない、2) 地域中核病院と地域連携施設との連携体制が十分ではない、3) キャッスルマン病の医療水準に施設間で差があるなどがある。そのため、地域中核病院間の連携、地域中核病院と地域連携施設間の連携を強化する必要がある。今後は、地域中核病院と地域連携施設のキャッスルマン病診療レベルのさらなる向上を図り、全国で高水準の医療が提供できる体制を整備していく。また患者会からの要望に応えられるよう、患者会の意見にも拝聴していく。


6.「国際連携」

キャッスルマン病は1956年にBenjamin Castlemanが提唱した慢性のリンパ節腫脹および慢性炎症を特徴とする稀な疾患群である。分類としては単一部位のリンパ節のみに発症する単中心性キャッスルマン病Unicentric Castleman Disease(UCD)、および複数部位のリンパ節に発症する多中心性キャッスルマン病Multicentric Castleman Disease(MCD)に分けられる。原因は不明であるが、一部の患者でHIVおよびHHV-8陽性者でのキャッスルマン病の合併が報告され、ウィルス感染との関連が示唆された。従来欧米からの報告ではHIVに関連したMCDが多く、日本ではほとんど報告がない事から日本と欧米との差異が言われていたが、統計的な資料は存在せず国際共同研究が必要であった。また治療に関しても症例数の少なさから各国での少数の症例報告が主体で、国別の症例を国際的に集積し解析する必要が考えられた。

自らがキャッスルマン病患者であるFajgenbaumらは2012年にキャッスルマン病の国際研究団体Castleman Disease Collaborative Network(CDCN)を設立し、ペンシルバニア大学を中心に、他国と共同で基礎および臨床的共同研究を開始した。現在は39カ国に420人以上のメンバーが活動している。そのうち中心メンバーは8カ国(イギリス、アメリカ、ブラジル、ノルウェー、日本、フランス、ニュージーランド、中国)32人のScientific Advisory Board(SAB)で日本よりは吉崎 和幸、井出 眞がCDCN設立時より活動している。実態調査の結果、現在はHHV-8陰性、HIV陰性のMCDが欧米圏にも相当数存在する事が確認され、日本での病像と本質的には違わないのではないかと考えられている。これらの結果より2017年にCDCNはキャッスルマン病の国際診断基準を作成したが、両名はこれに参加している。また現在国際治療アルゴリズムも策定中であるが、これに参画しできるだけ日本の治療実績が採り入れられるように努力している。

また吉崎は2015年に厚生労働省研究班(吉崎班)を設立し、国内での患者登録、実態調査を試みた。また同年に初めてキャッスルマン病患者団体が設立され、キャッスルマン病の啓蒙と患者間の連絡に当たっている。これらの活動も将来的には国際的な広がりをもつものと思われる。


各国のSABメンバー CDCNホームページ https://www.cdcn.org

               

7.「患者会支援」

(1) 患者会支援(キャッスルマン病)
知り合いに「キャッスルマン病」といっても、「どこかの城のはなし?」と返ってくるほど医師のあいだでも認知率が低いこの病気、残念ながら正しく診断されていない方も多いのではないでしょうか。研究班では患者会と協力して、啓蒙活動に励んでおりますが、患者数の把握ですら思うようになりません。患者の不安はいかばかりかと、身をもって感じるところです。

2018年、患者会の協力もあり、キャッスルマン病が指定難病になりました。治療にトシリズマブ(アクテムラ®)が使いやすくなりましたが、病気を根治させる薬ではないので、生涯にわたっての投与が必要となります。別の切り口からの根治薬の開発が望まれます。新たな治療法の開発には患者の協力が欠かせません。患者会とのさらなる協力で活動していきます。

研究班と患者会の「かけはし」として患者会に寄せられる相談などにもお答えしています。すべては患者のために。

(2)TAFRO症候群
2017年度にキャッスルマン病研究班とTAFRO症候群研究班がその類縁疾患も含めた新たな調査研究班として発足したのに合わせ、キャッスルマン病患者会にTAFRO症候群の患者さんも参加され、ともに活動しています。これに合わせて、研究班から青木定夫(新潟薬科大学薬学部教授)と髙井和江(新潟市民病院)が新顧問として患者会の支援に加わりました。

2017年度は9月30日第5回医療講演会・交流会・医療相談会に参加し、TAFRO症候群の病態や治療について講演の後、TAFRO症候群の患者さんからたくさんの相談をいただきました。2018年度は9月8日に新潟市で医療講演会・交流会が予定されています。
2018年、研究班と患者会の活動が実を結び、「特発性多中心性キャッスルマン病」が331番目の指定難病に認定されました。今後はTAFRO症候群の病態解明や治療法の確立のための研究を進めるとともに、指定難病の認定に向けて支援活動を継続していく予定です。

8.「新規治療法の調査研究」

本政策研究班とキャッスルマン病患者会の活動の結果として、指定難病へと追加が決定され、本年度(2018年)よりトシリズマブ(TCZ)/アクテムラ治療を受ける重症患者への負担軽減が図られることとなった。また、政策研究班としても、特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)の治療には抗IL-6受容体抗体であるTCZを第一選択薬として治療の初期より使用することを提唱した。しかしながら、経済的な理由から未治療で経過観察としたり、ステロイドのみの治療を選択する患者も多い。また、TCZ治療により症状の改善が見られても炎症マーカーであるCRPなどの検査値の改善が十分達成できない治療効果不十分例が存在する。

本政策研究班による疫学実態調査により治療効果不十分例(CRP, Hb, Alb, Igのうちどれかに検査値異常がある)患者が、種々の治療群毎に約半数程度づつ満遍なく存在していることが分かった。TCZでは完全には抑制できておらず、IL-6シグナル伝達経路とは別の経路の活性が介在していることを示唆している。生物学的製剤であるTCZ/アクテムラは高額であり、点滴投与は医師患者双方に負担が大きいことからも、これに代わる低分子医薬品などの登場が望まれる。

我々は政策研究班として、診療ガイド、重症度分類、疾患活動性指標、及び疾患レジストリの策定および構築を大なってきており、新規治療薬の治験を行うための土壌は揃っている。こうした活動の中、川端によって患者QOLを加味した疾患活動性を評価するための新規指標となるCHAPスコアが提案された。他方、川上、宇野らによる患者血清サンプルの解析においても、キャッスルマン病に特徴的と思われる血中バイオマーカーおよびその治療前後での動きが明らかになりつつある。このように、キャッスルマン病に対する新規治療薬の治験プロトコールを作成するための基盤が整いつつある。